今回は税務調査における「仮想隠ぺいと重加算税」についてです。
社員による横領の例は少なくありません。
この間も大手広告代理店の従業員が架空の外注経費を会社に支払わせ、相手先と利益を分配していた事案が報道されました。
経営者としては、信頼していた社員の横領に「まさか、どうして?」という気持ちでしょう。
しかし、他にも税金で思わぬ負担がかかる場合があることをご存じでしょうか?
税法の取扱い従業員の隠ぺい仮装行為が税務調査で判明すると、期限内申告税額に加え、過少申告加算税に代えて重加算税(35%、過去5年以内に無申告加算税、重加算税の前歴が あるときは45%)が課されます。
国税通則法では、重加算税の課税要件として、
① 過少申告加算税の要件に該当していること
② 納税者が隠ぺい仮装を行い、それに基づき納 税申告書を提出することと規定しています。
ここで納税者の範囲は誰かが問題になります。
文理では申告書を提出する法人が納税者となりますが、判例には隠ぺい仮装を行った従業員を納税者と同視できる者として重加算税を課すものが多くあります。
内部統制制度の構築・運用責任会社法では、取締役会(取締役会が設置されていない会社では、各取締役)に対し、法令違反が行われないよう内部統制制度の構築とその運用(取締役の職務執行に対する監督)が義務付けられています。
取締役が従業員による法令違反が行われないよう組織を運営せず、監視を怠っていたときは、善管注意義務や忠実義務を果たさず会社が被った損害に対して賠償責任が問われます。
重加算税の論拠はどこに?
経理部門の責任者や役員は、決算処理や 申告実務に権限を有する地位にあり、租税回避の目的を認識する機会は少なくないといえます。
一方、自己の利益のために横領する従業員の行為について会社は租税回避の意思は有してはいないでしょう。
不正を行った従業員を、監督責任を果たさなかった納税者と同視する判例の考え方は、会社法が取締役に求める内部統制制度の構築・運用責任を税法に取り入れたものといえます。
しかし、会社に損害を発生させた責任を税法にもあてはめ、重加算税を課す論拠とする考え方には無理があるように思われます。
もとより会社法上のコンプライアンスは、会社の信用と存続のため会社が自ら遂行するもの。税務コンプライアンス とは次元が異なるといえないでしょうか。
この記事の監修

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税務調査専門の税理士
元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。
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