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トライアル雇用制度は、企業と求職者が互いにメリットを享受できる制度です。企業は、実務を通じて求職者の能力や適性を評価する機会を得られ、求職者は実際の職場での経験を積むことができます。この制度を利用することで、企業は人材採用におけるリスクを軽減し、求職者には新たな職場での就業機会が提供されます。
本記事では、トライアル雇用制度の概要から、その種類、試用期間との違い、導入のメリットとデメリット、そして導入方法に至るまで、詳細にわたって解説しています。
トライアル雇用制度とは
トライアル雇用制度とは、企業と求職者の間で生じる可能性のあるミスマッチを解消し、双方にとって最適な雇用関係を築くための仕組みです。この制度は、公共職業安定所(ハローワーク)が紹介する求職者を対象に、企業が原則として3カ月間の試用期間を設け、その間に労働者の能力や適性を評価し、雇用の継続を判断するものです。この期間を「トライアル期間」と呼びます。
トライアル雇用制度の目的
トライアル雇用制度の主な目的は、未経験者やキャリアチェンジを希望する人々が、新しい職種に挑戦する機会を提供し、企業側にはその人材の能力や適性をじっくりと評価する時間を与えることにあります。この制度を通じて、企業は人材の採用リスクを低減しつつ、求職者には実務経験を積むチャンスを提供することができます。
制度の特徴とメリット
トライアル雇用制度は、以下のような特徴とメリットを持っています。
・奨励金の支給: 企業はトライアル雇用期間中、条件を満たせば国から奨励金を受け取ることができます。これにより、企業の人材採用にかかるコスト負担を軽減することが可能です。
・雇用のミスマッチを防止: トライアル期間を設けることで、企業は求職者の実際の業務遂行能力や職場への適応性を確認できます。これにより、正式採用後のミスマッチリスクを低減させることができます。
・求職者にとってのチャンス: 未経験の職種や新たなキャリアパスに挑戦したい求職者にとって、トライアル雇用は実務経験を積み、自身の能力を証明する絶好の機会となります。
制度の流れ
トライアル雇用制度を利用する流れは以下の通りです。
・求人提出: 企業はハローワークにトライアル雇用の求人を提出します。
・求職者の紹介と選考: ハローワークから求職者が紹介され、企業は面接などを通じて選考を行います。
・トライアル雇用の開始: 選考を通過した求職者は、トライアル雇用として働き始めます。この期間は原則3カ月間です。
・評価と正式採用の判断: トライアル期間終了後、企業は求職者の業務遂行能力や適性を評価し、正式な雇用契約を結ぶかどうかを判断します。
トライアル雇用制度は、企業と求職者双方にメリットをもたらす制度です。企業は人材の採用リスクを低減でき、求職者は新たなキャリアチャンスを得ることができます。この制度を上手く活用することで、企業の成長と求職者のキャリア発展を同時に促進することが可能です。
トライアル雇用の種類
トライアル雇用制度は、企業と求職者の双方にとって有益な機会を提供するために設計されています。この制度には、さまざまな背景やニーズを持つ人々をサポートするために、複数のコースが用意されています。以下では、それぞれのコースの特徴と目的を詳しく解説します。
一般トライアルコース
このコースは、一般的な求職者を対象としています。企業は、この制度を利用することで、対象労働者1人あたり、月額最大4万円(合計最大12万円)の奨励金を受け取ることができます。このコースの目的は、企業が新しい人材をリスクなく試す機会を持ち、求職者が実務経験を積むことができるようにすることです。
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
障害を持つ求職者を支援するために設計されたこのコースは、障害者の雇用機会を増やすことを目的としています。雇用期間は原則3カ月で、要件を満たせば、労働者1名に対して4万円から8万円の奨励金が支給されます。短時間トライアルコースは、週20時間以上の就業が難しい労働者を対象としており、より柔軟な働き方をサポートします。
若年・女性建設労働者トライアルコース
35歳未満の若年者や女性を対象としたこのコースは、建設業界での就労機会を増やすことを目的としています。中小建設事業主は、要件を満たせば、対象労働者1人あたり、月額最大4万円(最大12万円)の奨励金を受け取ることができます。このコースは、建設業界における多様性の促進と若手人材の確保を目指しています。
これらのトライアル雇用の種類は、企業が様々な背景を持つ人材を試す機会を提供し、同時に求職者には新しい職場での経験を積むチャンスを与えます。各コースは、特定のニーズに応じて設計されており、企業と求職者双方にメリットをもたらすようになっています。
トライアル雇用と試用期間の違い
これら二つの制度は、表面上似ているように見えますが、実際には重要な違いがあります。この違いを理解することは、企業が人材を採用する際に、どちらの制度を利用するかを決定する上で非常に重要です。
契約の種類
まず、トライアル雇用と試用期間の最も基本的な違いは、契約の種類にあります。トライアル雇用は、有期雇用契約です。これは、公共職業安定所(ハローワーク)が紹介する就業希望者を、企業が原則として3カ月の期間限定で採用するというものです。この期間が終了すると、労使間で雇用の継続について話し合いが行われます。
一方、試用期間は、無期雇用契約または有期雇用契約のいずれかで設定されます。試用期間は、企業が新たに採用した人材の能力や適性、就労態度を評価するために設けられる期間です。この期間は、労使間で合意した雇用契約書によって定められます。
期間の決め方
トライアル雇用の期間は、行政が設定したコースにより定められています。これに対して、試用期間の期間は、労使間で決定され、雇用契約書に記載されます。試用期間は一般的に1~6カ月程度で設定されることが多いですが、これは企業と従業員の合意によって自由に決めることができます。
解雇の制限
トライアル雇用後は、契約期間が終了するため、特に解雇に制限はありません。つまり、トライアル期間が終了すれば、自動的に雇用関係も終了します。これにより、企業は比較的容易に雇用関係を終了させることができます。
一方で、試用期間中でも、試用期間後でも、無期雇用契約の場合、契約期間中の解雇には法律に定められた手続きが必要です。企業は、明確な根拠がなければ、簡単に従業員を解雇することはできません。試用期間中に解雇する場合でも、解雇予告や解雇理由の明示など、法律に基づく一定の手続きを踏む必要があります。
このように、トライアル雇用と試用期間は、契約の種類、期間の決め方、解雇の制限という点で大きな違いがあります。企業が人材を採用する際には、これらの違いを踏まえた上で、どちらの制度を利用するかを慎重に選択することが重要です。
トライアル雇用導入のメリット
この制度を活用することで、企業は人材採用におけるリスクを軽減し、より効果的な人材確保が可能になります。以下に、トライアル雇用導入の主なメリットを詳しく解説します。
奨励金が支給される
トライアル雇用制度の最大の魅力の一つは、企業が奨励金を受け取れる点です。企業は、制度の要件を満たすことで、対象労働者1人あたり、一般トライアルコースであれば、月額最大4万円(合計最大12万円)の奨励金を受け取ることができます。この奨励金は、新たな人材を試す際のコスト負担を軽減し、企業の財務的な負担を減らす効果があります。
雇用のミスマッチを防げる
トライアル雇用制度を利用することで、企業は労働者の能力や適性を実際の業務を通じて確認することができます。原則3カ月の有期雇用契約を経て、労働者と企業の相性や適性を見極めることが可能になります。これにより、正式採用後に発生する可能性のある雇用のミスマッチを防ぐことができ、長期的な人材育成につながります。
採用コスト・工数が抑えられる
ハローワークを通じてトライアル雇用の求人を出すことで、企業は条件に合った人材を紹介してもらえます。これにより、求人広告費用や、多数の応募者から適切な候補者を選ぶための時間や労力を節約することができます。また、ハローワークを介した採用プロセスは、企業が自身で採用活動を行う場合に比べて、コストと工数の両面で効率的です。
社会的貢献
トライアル雇用制度は、就業機会に恵まれない人材に対しても、実務経験を積む機会を提供します。これにより、未経験者やキャリアのブランクがある人材が社会に復帰しやすくなり、企業は社会的貢献を果たすことができます。また、多様な背景を持つ人材の採用は、企業のイノベーションや柔軟性の向上にも寄与します。
トライアル雇用制度を上手に活用することで、企業は新たな人材をリスクを抑えつつ試すことができ、効果的な人材採用と育成が可能になります。これらのメリットを最大限に活かし、企業の成長と発展につなげましょう。
トライアル雇用導入のデメリット
トライアル雇用制度は多くのメリットを提供しますが、一方で導入する際にはいくつかの注意点があります。これらのデメリットを理解し、事前に対策を講じることが、制度をより効果的に活用するためには重要です。
補助金申請に伴う事務処理
トライアル雇用制度を利用する最大の魅力の一つは、奨励金が支給される点にあります。しかし、この奨励金を受け取るためには、申請書類の提出や計画書の作成など、一定の事務処理が必要になります。これらの手続きは、特に小規模な企業や人事部門のリソースが限られている場合、負担となることがあります。
事務処理には、雇用開始前の計画書の提出や、トライアル雇用終了後の支給申請書の提出などが含まれます。これらの書類は、正確で詳細な情報を提供する必要があり、提出期限を守ることも重要です。適切な書類の準備と期限内の提出が求められるため、事務手続きには相応の時間と労力が必要となります。
支援金の入金までの時間
トライアル雇用制度を利用する際、もう一つのデメリットは、支援金の入金までに時間がかかることです。企業は、トライアル雇用期間中も従業員に対して給与を支払う必要がありますが、奨励金が実際に企業の口座に振り込まれるのは、トライアル雇用期間が終了し、必要な手続きが完了した後です。
このタイムラグは、特に資金繰りに余裕のない中小企業にとっては、一時的な財務負担となる可能性があります。奨励金の支給を受けるためには、トライアル雇用終了後に支給申請を行い、審査を経て支給が決定されます。このプロセスには数週間から数ヶ月かかることがあり、その間、企業は従業員への給与支払いを自己資金で賄う必要があります。
トライアル雇用制度の導入は、企業にとって多くのメリットをもたらしますが、補助金申請に伴う事務処理の負担や、支援金の入金までの時間がかかるというデメリットも存在します。これらのデメリットを事前に理解し、適切な対策を講じることで、トライアル雇用制度をより効果的に活用することが可能です。企業は、制度の利用を検討する際に、これらの点を考慮に入れる必要があります。
トライアル雇用導入の仕方
以下のステップに沿って、トライアル雇用制度を導入する方法を詳しく見ていきましょう。
1. ハローワークにトライアル雇用求人を提出
トライアル雇用制度を利用するための最初のステップは、ハローワークにトライアル雇用の求人を提出することです。この際、求人情報には、トライアル雇用を希望する旨を明記し、どのトライアル雇用コースを利用するか、募集する職種や条件など、具体的な情報を提供する必要があります。
2. ハローワークからの求職者紹介と選考
求人を提出した後、ハローワークから就業希望者の紹介を受けます。企業は、紹介された求職者に対して面接などの選考プロセスを行い、採用の可否を決定します。この選考プロセスは、通常の採用活動と同様に行われますが、トライアル雇用の目的や条件を求職者に明確に伝えることが重要です。
3. 雇用開始から2週間以内に実施計画の提出
採用が決定したら、企業は雇用開始から2週間以内に、トライアル雇用の実施計画をハローワークに提出する必要があります。実施計画には、トライアル雇用期間中に行う研修内容や、求職者が習得を目指すスキル、期間終了後の評価基準など、具体的な計画を記載します。
4. トライアル雇用終了後の支給申請
トライアル雇用期間が終了したら、企業はトライアル雇用終了翌日から2カ月以内に、奨励金の支給申請を行う必要があります。支給申請には、トライアル雇用期間中の活動報告や評価結果など、実施計画に基づいた成果を示す書類を提出します。
5. 支給要件を満たした場合の奨励金支給
提出された書類が審査され、支給要件を満たしていると判断された場合、奨励金が企業に支給されます。この奨励金は、トライアル雇用にかかったコストの一部を補填するものであり、企業の負担を軽減します。
トライアル雇用制度の導入は、企業にとって有益な人材採用の手段となり得ます。しかし、制度をスムーズに活用するためには、上記の手順を正確に実行することが重要です。適切な準備と計画により、トライアル雇用制度を通じて、企業と求職者双方にとって有意義な結果をもたらすことができます。
まとめ
トライアル雇用制度は、企業と求職者双方にとって大きなメリットをもたらす可能性がある制度です。この制度を通じて、新たな人材を試用期間を設けて採用することができ、その能力や適性をじっくりと評価することが可能になります。また、求職者にとっても、実務経験を積む貴重な機会となり、将来の雇用につながる可能性が高まります。
導入にあたっては、ハローワークに求人を提出し、選考を経て採用を決定した後、実施計画の提出や奨励金の申請など、いくつかの手続きを正確に行う必要があります。これらのプロセスを適切に管理することで、トライアル雇用制度の利点を最大限に活用することができます。
企業は、トライアル雇用制度を活用することで、人材採用のリスクを軽減し、より適切な人材を見つけることが可能になります。また、求職者にとっても、自身のスキルを証明し、新たな職場での就業機会を得ることができるため、双方にとって有益な制度であると言えるでしょう。
トライアル雇用制度の導入と運用には、適切な準備と計画が必要です。企業は、制度の詳細を理解し、必要な手続きを丁寧に実施することで、この制度を成功させることができます。トライアル雇用制度を通じて、企業の発展と求職者のキャリア形成の両方を支援することが期待されます。
この記事の監修
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税務調査専門の税理士
元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。
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