会社を運営している以上、どんなに正しく申告書を作成したとしても税務調査を完全に回避するのは難しいです。

税務調査の対象となる期間は税目や脱税行為の有無で異なり、税務署は過去に提出した申告をまとめて調査します。

本記事では法律上の税務調査期間と、実際の調査する申告年分の対象期間について解説します。

税務調査の対象期間は原則5年

税務調査が実施できる期間は国税通則法に明記されています。

国税通則法は国税についての基本的な事項や、各税目に共通する事項を定めた法律で、国税通則法第70条1項では、税務調査期間を申告期限から5年と規定しています。

調査可能期間である5年を過ぎた場合、税務署は申告内容の誤りを見つけたとしても、時効が成立した年分の期限後申告書および、修正申告書の提出を促すことはできません。

ただし申告期限から5年は、申告誤りを指摘できる期間であって、銀行口座の入出金の状況などは5年以上遡って調べることもあります。

なお本来納める税金よりも多く税金を支払っていた場合に提出する書類は、修正申告書ではなく更正の請求書です。

更正の請求書を提出できる期間にも時効が存在し、税務調査と同様申告期限から5年を過ぎてしまうと還付請求できなくなりますのでご注意ください。

税目で調査期間が別途定められている場合もある

税目によっては、調査期間が5年より長いこともあります。

そこで代表的な2つのケースをご紹介します。

法人税で純損失等に関する更正期間は10年

法人税に係る純損失等の金額についての更正の期間は10年と、通常の5年よりも期間が長く設定されています。

更正できる期間が10年なのは、青色申告法人の欠損金の繰越期間が10年あることに伴い延びています。

また更正の請求を行える期間も、法人税に係る純損失等の金額においては、5年ではなく10年です。

贈与税の調査期間は6年

贈与税は個人が個人から財産を無償でもらった場合、課税対象となる税金です。

調査期間については相続税法第36条で6年と定められており、他の税目よりも調査期間は1年間長いです。

贈与税は申告期限を過ぎてから贈与の実態を把握する場合や、相続税の申告の際に贈与事実が判明するケースもあるなどの理由から、調査期間が他の税目よりも1年長くなっています。

なお贈与税の調査期間が1年延長していることに伴い、更正の請求書の提出期間も5年ではなく6年です。

脱税が見込まれる場合の調査期間は7年

通常の調査期間は5年ですが、次に該当する場合の調査期間は7年となります。

<調査対象期間が7年になるケース>

● 脱税

● 不正還付

● 国外転出時の特例対象

脱税とは、申告内容を偽ったり経費を水増しすることで、本来納めるべき税金を意図的に回避する行為です。

不正還付は、還付金を不正に受けるために、源泉徴収金額を過大に計上するなどの行為をいいます。

脱税や不正還付を可能な限り取り締まるため、これらに該当した申告については調査期間が通常よりも延長されています。

申告期限から7年は非常に長い期間ですが、意図的に税金逃れをするなどをしない限り、基本的に調査期間は5年との認識で問題ありません。

なお国外転出をする場合の譲渡所得等の特例などの対象になった際も、調査期間は7年となりますが、国外転出時までに納税管理人の届出および税務代理権限証書の提出がある場合など、一定の要件を満たしていれば調査期間は5年になります。

実際に税務調査では何年前まで遡って調べるのか

税務調査期間の5年や7年は、法律上で調査が実施できる期間です。

調査担当者が自宅や会社に訪れて行う「実地調査」では、法律上調査できる期間すべてを調べるわけではありません。

税務調査では3年から5年分をまとめて確認する

税務署は実地調査を行う場合、相続税など毎年申告しない税金を除き、基本的に複数年分をまとめて調査します。

税務調査が実施できる期間は申告期限から5年ですが、調査可能期間すべての申告書を必ず調べるとは限りません。

そのため直近3年分を対象として、調査が実施されるケースもあります。

実地調査の際は調査期間の指定がある

税務署の調査担当者は、実地調査を行う際、調査対象税目と調査期間を事前に通知しなければなりません。

調査担当者が事前通知で調査対象期間を3年と伝えた場合、3年分の申告書のみしか調べることができません。

しかし、例外規定として、税務調査を行っている中で申告漏れなどを疑われるケースが確認された場合、調査担当者は事前通知で伝えた対象税目・調査期間以外の申告についても、調査することが可能です。

まとめ

以前は税務署が調べる申告書は3年分と言われていましたが、現在は原則5年分の申告書が調査対象です。

脱税行為をしていた場合、調査期間は7年に延びますのでご注意ください。

調査担当者は実地調査をする際、事前通知で対象税目と調査期間を指定します。

ただ申告漏れなど調査が必要と判断すれば、それ以外と税目や期間でも調べることも可能です。

調査年分が多くなれば、調査が終了するまでに時間を要しますので、税務署から指摘を受けないためにも日頃から税理士と相談し、税金対策および税務調査対策を講じてください。

この記事の監修

植村悦也
植村悦也
税務調査専門の税理士

元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。