本日は、二人に一人がかかると言われている「がんの免疫治療に係る医療費控除」についてコラムをお送りさせて頂きます。

がん免疫療法は、人間の持つ免疫の力を利用してがんを攻撃するがん治療法ですが治療法の中には効果がまだ認められず、保険が適用されない自由診療となるものもあります。高額な医療費を支払った場合、医療費控除は受けられるのでしょうか。

診療、治療のため通常必要な医療費

所得税法では、医療費控除の対象として「医師による診療または治療」、「治療または療養に必要な医薬品の購入」の対価のうち「通常必要と認められるもの」、「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」と規定しています。

判例では、眼の屈折異常を矯正する目的で眼鏡等を装用した際、医師の検査費用と眼鏡等の購入費用の医療費控除該当性が争われた裁判で「医療費控除制度は、治癒可能な心身の機能の低下を回復させるために必要となる医療上の経済的支出に対する課税上の調整措置である」と治癒を前提とした医療であることが判示されています。

がん免疫治療の場合、自身で選択した治療法が治療の効果が証明されていない自由診療であるとしても、そこに一定の効果が期待され、医師の診断にもとづき治療が行われているのであれば、「治癒可能な心身の機能低下の回復」を目的とする医療行為に該当し、医療費控除が適用されるのではないでしょうか。

ちなみに丸山ワクチンの購入費用は、主治医の判断の下、主治医により治療が行われることから、医師等による診療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象となる旨の判示があります。

疾病予防と健康増進の医薬品は除外される

所得税通達では、薬機法に規定する医薬品が医療費控除の対象とされますが、医薬品に該当しても疾病予防と健康増進のみに使用されるサプリメントは医療費控除の対象とされません。

判例では、健康補助食品である漢方薬が医薬品でないこと、また医薬品に該当する漢方薬に治療・療養の必要性を認めず医療費控除が適用されなかったものがあります。

治療法の選択には慎重な検討を!

医療費控除が適用されるとしても自由診療で免疫療法を受ける場合は、治療効果、安全性、費用の負担をよく検討した上で慎重な対応が求められます。担当医とよく話し合いましょう。
また国立がん研究センターや地域拠点病院の相談窓口で免疫療法の情報を取得し、相談することもできます。

このコラムは、東京渋谷・恵比寿・新宿を中心に、会計事務所(税理士事務所)を経営する、アップビレッジ経営会計事務所の税理士植村が毎日お送りさせて頂いております。

(補足)

国立がん研究センター「がん情報サービス」免疫療法

上記期間のサイトでは、がん免疫治療法は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保たせる「免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボなど)」、免疫ががん細胞を攻撃する力を強め、免疫にアクセルをかける「その他の免疫療法」に分類し、それぞれ治療の効果が証明されているもの(保険診療)と証明されていないもの(自由診療)が解説されています。相談窓口では、ステージ別、種類別に有効性、安全性、治療法、医師とのコミュニケーションの取り方など相談できます。

この記事の監修

植村悦也
植村悦也
税務調査専門の税理士

元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。