法人税は、節税対策をすることで納める税金が大きく変わります。

もちろん発生した利益に応じた法人税を、そのまま申告しても問題ありません。

しかし経費を上手く活用すれば、手元に資産を残しつつ支払う税金を少なくできますので、節税方法の種類と注意点について解説します。

なぜ法人税の節税対策をする必要があるのか

法人税は利益に対して支払う税金です。

売上から経費を差し引いた金額が利益になりますので、売上と同じ分だけ経費を使えば利益はゼロとなり、納める法人税もゼロになります。

節税は会社のためにお金を使うために行う

法人税の節税対策をする理由は、会社が生み出した利益を会社のために最大限活用するためです。

法人税として納めた税金は、国が公共サービスなど国民のために使われますが、会社に直接メリットのある使われ方をするとは限りません。

一方で利益を税金ではなく設備に投資すれば、会社は新たな設備を取得しつつ利益を減少させられるため、二重のメリットがあります。

税務署は節税のアドバイスをしてくれない

税務署は法人税の申告書を提出する場所ですが、節税のアドバイスを積極的に行うことはしません。

個人の所得税の申告は確定申告期間が設けられているため、その期間中に税務署職員に相談することも可能です。

しかし法人は会社によって決算月が異なるため、個人のような確定申告の相談会場は設けられていません。

そのため法人税を納め過ぎないようにするためには、会社自身で節税対策を練る必要があります。

法人税を節税するための3種類の対策

法人税を節税する方法としては3種類の対策があり、会社の状況に合わせた対策を実行するとより節税効果が上がります。

● 設備投資

● 社員への投資

● 特例制度の活用

新たな事業への先行投資

新規事業を立ち上げる際は、初期投資費用が必要です。

事業を始めた当初から初期投資費用を回収するのは難しく赤字になりやすいですが、会社の利益が出ている段階で新たに事業を行うことで、会社の利益と新規事業の赤字を相殺し、利益を少なくすることも可能です。

また利益金額を限度として設備投資を行えば、金融機関から資金調達する必要もありませんので、借入金に伴う利息の支払いも節約できます。

社員への賞与や福利厚生に充てる

ボーナス(賞与)は会社にとって損金となりますので、会社の利益を社員へ還元しつつ、利益を抑えられます。

また法定外福利も一定の要件を満たせば、福利厚生費として経費計上可能です。

住宅手当や配偶者・育児手当などの福利厚生の充実は、社員の仕事に対するモチベーションアップに繋がり、生産性の向上も見込めます。

特例制度の活用

経費を使用する以外の節税方法としては、特例制度の活用があります。

たとえば前払費用は、原則として支出した時に資産へ計上し、役務の提供を受けた時に損金に算入します。

しかし「短期前払費用の特例」を適用すれば、支払時点で損金の額に算入することが認められるため、決算期間際の節税対策として有効です。

また期間限定で税制優遇の特例制度や、中小企業に認められた優遇措置を活用して法人税の支払いを抑える方法もあります。

法人税の節税対策を実施する際の注意点

経費として使う金額を増やせば利益は減少し、法人税の納税額を抑えられます。

ただ目的も無く経費を使用しても、会社が得られるメリットはほとんどないため、経費の使い方も大切です。

また過度な節税や法律解釈を間違えると、税務調査の対象になることもあります。

経費は資産として残る支出をすべき

会社の経費を使うとしても、不必要な設備を購入しても意味がありませんし、固定資産を取得すると維持管理費が発生するため、会社の資産となる資産を購入する必要があります。

また福利厚生として社員旅行を実施した場合、参加者が一部の人に限定されていたり、福利厚生の範囲を超えた旅行と判断されれば、福利厚生費として認められない可能性もありますのでご注意ください。

法律の範囲内で行える節税手段を用いること

税務署は合法的に税金を抑えていることに対して、指摘することはありません。

しかし経費にならない費用を計上したり、特例の適用要件を満たしていなければ税務調査対象となります。

また意図的に税金逃れをしたと判断されれば、重加算税の対象になることもあります。

節税と脱税は根本的に違いますので、支払う税金を少なくする際は節税手段を用いてください。

税務調査の対応には専門知識が必要になる

法律には「通常要する費用」のように、金額や日付など明確な基準が記載されていないこともあります。

具体的な事例が明記されていない場合には、法令解釈通達や過去の判例、条文解釈により経費算入の有無などを判断します。

納税者側と税務署側の意見が対立した場合、節税が適法であること根拠を示すための専門的な知識が必要です。

一般の方が高度な法律解釈や判例を読み解いて節税の根拠を示すのは難しいため、節税対策をする際は事前に税理士へ相談することをオススメします。

この記事の監修

植村悦也
植村悦也
税務調査専門の税理士

元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。