税務調査を受けたいと思う人はいません。
しかし不正や脱税をしていなくても、税務署から税務調査の連絡を受ける可能性はあります。
本記事では調査を受けやすい会社と、受けにくい会社の特徴を解説しますので、税務調査対策のご参考にしてください。

税務調査を受けている法人の件数

一般的に税務調査は「実地調査」をいい、実地調査は調査担当者が会社や自宅に訪れる調査です。
実地調査が年間でどのくらい行われているかはあまり知られていませんので、最初に1年間で実施される実地調査件数をご紹介します。

法人への実地調査件数は年間10万件

国税庁の報道発表資料「令和元事務年度法人税等の調査事績の概要」によると、令和元事務年度に実施された法人税への実地調査件数は7万6千件です。
令和元事務年度(令和元年7月から令和2年6月)の下期は、新型コロナウイルスの影響で実地調査件数が減少していました。
平成30年事務年度の実地調査件数は9万9千件でしたので、1年間通してでは約10万件実地調査が行われています。
ちなみに令和2年6月30日時点で法人は316万5千社ありますので、毎年3%程度の法人が実地調査を受けている計算です。

実地調査1件当たりの追徴税額は347万円

令和元事務年度に実地調査を受けた法人が支払った追徴税額は、1件当たりの347万円です。
追徴税額は、追加で支払う本税と加算税の合計金額です。
税務調査を受けたとしても、必ず追徴課税が発生するとは限りません。
しかし実地調査を受けた法人の75%は申告誤りの指摘されていますので、税務署は基本的に追徴税額が見込める会社を調査対象としています。

税務調査の対象となりやすい法人の特徴

税務調査対象となりやすい法人の特徴は3つあります。
● 脱税割合の高い業種
● 急成長した会社
● 税理士関与がない会社

会社がいずれかの特徴に該当した場合、税務調査を受ける可能性が高くなります。

脱税割合の高い業種

脱税割合の高い業種は、それだけで税務調査の対象となりやすいです。
令和元事務年度において不正発見割合が多かった上位3業種は、「バー・クラブ」・「その他の飲食店」・「外国料理」です。
不正発見割合が高い業種に該当しても、適正に申告していれば追徴税額を支払う必要はありません。
しかし他の業種よりも、税務署が申告内容に疑いの目を向けていることは間違いありませんので、税務調査を受ける確率は他の業種よりも高くなります。

売上が伸びている急成長の会社

急成長した会社は事業が忙しいため、税金手続きがおざなりになりやすいです。
法律の範囲内の節税行為は合法ですが、法律を無視した節税は脱税行為ですので、法律の範疇を超えて税金を安くしようとすれば、税務署から指摘を受けます。
また前年に比べて売上が大きく伸びると、経費の水増しをしやすい状況が生まれるため、売上と経費のバランスが大きく変わると税務調査を受ける可能性が高くなります。

税理士が関与していない会社

税務署は法人数に対して年間3%程度しか実地調査を行っていませんので、不正が起こりやすい業種や、過去に不正した法人を対象に優先的に調査を実施する傾向にあります。
税理士が関与していない法人は、税理士関与がある法人と比べ、申告漏れや計算誤りは発生しやすいです。
そのため税理士に依頼せずに申告書を作成した法人は、税理士が関与している法人よりも税務署が念入りに調べるため、調査を受けやすい傾向にあります。

税務調査を受けにくい法人の特徴

税務調査を受けない法人の特徴は2点に集約されます。

会社に顧問税理士がいる

先ほど申し上げましたが、顧問税理士の有無は税務調査を受ける確率に影響します。
令和2年時点の法人数は316万5千社ですが、30年前の平成2年は196万2千社と1.6倍に増えています。
一方で、税務調査を行う国税組織の人員数は、30年前とほとんど変わりません。
税務署は調査件数不足を補うために、税理士が所属している税理士会と連携し、納税者に対して適正申告を促しています。
税理士関与がある法人へむやみに調査を実施すると、信頼関係が損なわれるため、申告漏れなどの指摘事項がなければ調査を実施することはほとんどありません。

適正申告している

会社を経営している人であれば自社の申告書しか作成しませんが、税理士は法人の申告書を数十数百と作成しているため、申告書を作成する熟練度が違います。
そのため納税者と税の専門家である税理士を比較すると、税理士の方が知識と経験があるためより適切に申告書を作成することが可能です。
計算誤りや特例要件の不備がなければ、税務署は調査を実施するメリットがないので、調査を行いません。

税務調査を回避するための方法

税務署に不正が見つからないことと、税務調査を回避することは意味が違います。
不正を隠してもいつかは税務署に指摘される可能性がある一方、正当な方法で税務調査を回避すれば、税務署の目を気にする必要がありません。

適正申告は調査を回避する絶対条件

適正申告することは、税務調査を回避する絶対条件です。
正しい申告を作成すれば、税務署は税務調査を実施しても追徴課税できませんので、調査を行うメリットがありません。
またマイナンバーが創設されたことにより、国税組織は昔よりも個人・法人関係なく情報を把握しやすくなっています。
税金逃れをするために申告をしない会社もありますが、最終的には税務署に見つかり、重加算税が賦課されますので勧められません。

申告誤りの疑いは税務調査の原因に

税務署は明らかな不正を把握した場合以外に、申告内容をチェックするための確認調査を実施するケースもあります。
たとえば売上に対して経費が少ない会社や、売上が前年と変わらないのに経費が大幅に増加している会社は、たとえ適切に申告していたとしても調査を受ける可能性があります。
そのため一貫性を持って節税しないと、税務署から疑われ、調査対象となりますのでご注意ください。

顧問税理士選びも重要

税理士にも各専門分野があり、専門外の税金の申告を依頼すると申告書を正しく作成できず、税務署から指摘を受けてしまうケースもあります。
また脱税指南をして資格を剥奪される税理士もいますので、申告書の作成依頼をする税理士選びも重要です。

まとめ

どんなに正しく申告書を作成したとしても、税務調査を受ける確率がゼロにすることはできません。
しかし今回ご説明した対策を複合的に駆使すれば、一般の会社よりも税務調査を受ける確率は下げることが可能です。
脱税指南をする税理士は論外ですが、ミスが多い税理士は税務署から狙われている可能性もあります。
そのため税務調査を受けないためにも、税理士選びは慎重に行ってください。

この記事の監修

植村悦也
植村悦也
税務調査専門の税理士

元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。

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