配偶者手当の見直し検討を

成果主義が言われ始めたころから、基本給に加えて支給される各種手当の見直しが行われるようになりました。

特に配偶者手当については、女性活躍や同一労働同一賃金、雇用の多様化などの影響により、廃止する傾向は進むと思われます。

配偶者手当は、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整の要因として指摘されています。

これによって賃金相場の上昇が抑制され、あるいは女性の能力を十分に発揮できないなどの影響があり、企業が人的資源を十分に活用できない状況をもたらしているとされます。

その状況を改善するため、厚生労働省は、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう配偶者手当の見直しを進めることが望ましいとし、参考となるリーフレットの改定版を公表しました。
配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項 (mhlw.go.jp)

手当見直しのポイントと事例

廃止する場合の具体的な事例としては、該当額を基本給に組み込む、子供・障害者を対象とした手当を創設するなど、人件費総額を維持した事例があります。

また2~3年ほどの経過措置期間を設けて、徐々に減額していく、あるいは賞与で補填するなどの対応を行った企業もあります。

企業個別の事情に則った検討が必要ですが、ポイントとしては、

①ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組
②労使の丁寧な話合い・合意
③賃金原資総額の維持
④必要な経過措置
⑤決定後の新制度についての丁寧な説明

などがあげられます。

見直しを行うにあたっては就業規則の変更となりますので、その変更に合理性があるかどうか、必要な手続についても考慮しましょう。

手当の見直しは従業員の収入に直結する話ですので、労使間の丁寧な話合いが求められます。
また、配偶者手当だけではなく、給与制度全体を見直す機会にするのもよいでしょう。

相談先としては、都道府県労働局や働き方改革推進支援センターに窓口がありますので活用されてみられるのも良いかと思います。

補足

配偶者手当について、最初に検討会の報告書がまとめられたのは平成28年4月です。

配偶者手当は、日本のいわゆる男性のメンバーシップ雇用の下での経済成長や労働者の生活の安定に貢献してきたとされます。

しかし、平成10年代以降いわゆる成果主義賃金が広がったこと等に伴い、家族手当の普及率は低下し、平成11年の90.3%から平成27年には76.5%まで低下しました。

これを受けて、手当の見直しについて企業側に求める通達が出されました。

「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について(平成28年5月9日付 基発0509第1号)

もう一つの要因とされる税制・社会保障制度については、配偶者控除等の見直しや被用者保険の適用拡大などの制度改正が行われています。

所得控除額の対象となる配偶者の給与収入の上限は103万円から150 万円に引き上げられました。
また、社会保険の加入対象も拡大されています。

この記事の監修

植村悦也
植村悦也
税務調査専門の税理士

元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA