顧問税理士を変更することで、税務調査を受けやすくなる事実はありません。
逆に顧問税理士を変えた方が、税務調査を回避できるケースもあります。
本記事では、顧問税理士を変えた際の税務調査への影響と、税理士を変更するメリットについてご説明します。

前顧問税理士が税務署に脱税の密告をする可能性

国税組織は、ホームページや税務署窓口で、脱税についての情報提供を呼びかけています。
そのため前顧問税理士が税務署に対し、密告する可能性は否定できません。
しかし、実際に前顧問税理士が税務署に情報提供するケースはほとんどありませんので、ご安心ください。

税理士が情報を漏らすのは守秘義務違反になる

税務署が情報提供の資料を元に、税務調査を実施するケースはありますので、前顧問税理士の密告により、税務調査を受ける可能性はあります。
しかし税理士は仕事の性質上、顧問を辞めたとしても担当した会社の内部情報を外部に漏らすことは許されません。
情報を漏らせば守秘義務違反になり、訴えられる可能性もありますので、そこまでして税務署に密告するメリットは少ないです。

脱税行為を指南した税理士は罰則の対象

税務調査で申告誤りの指摘を受ければ、納税者は追加で税金を支払うことになり、脱税が発覚すれば重加算税の賦課や、逮捕されるケースもあります。
一方で、税理士が脱税を指南した場合、税理士法違反として処罰されます。
罰則内容は、税理士業務の停止や禁止など、脱税指南による処分は非常に重いです。
前顧問税理士が自ら指南した脱税内容を税務署に密告すれば、税理士自身も処分を受ける可能性がありますので、リスクを負ってまで情報提供する人はほとんどいません。

顧問税理士の変更で税務調査が行われるケース

顧問税理士を変更した後に、税務調査を受ける可能性はゼロではありませんので、調査が実施される理由について解説します。

税務会計の処理方法が変更したことで確認調査を受ける

税務調査は、脱税を取り締まる調査以外に、特例適用や会計処理が適切に行われているかを確認する目的で実施される調査もあります。
合法的な節税であれば、会計処理を変更しても問題ありませんが、今までの申告とは内容が大きく変わっていると、確認調査を受ける可能性もあります。
ただ確認調査は、顧問税理士の変更によりものではなく、申告内容が変わったことに対する調査です。
そのため同じ税理士に依頼していても、確認調査を受けることはあります。

税務調査の時期と税理士交代のタイミングが偶然重なる

世間で耳にする「顧問税理士変更後に税務調査を受けた」との話は、税理士を変えたタイミングと、税務調査の日程が偶然重なっただけの可能性が高いです。
どの税理士が申告書を作成しても、正しく申告していれば問題ありませんし、誤りがあれば同じ税理士に申告書作成依頼をしても指摘を受けます。
税務署の立場からしても、誰が作成した申告書であっても、申告内容が適切であれば調査を実施するメリットがありません。
そのため顧問税理士の変更だけを理由に、税務調査を受ける可能性は低いです。

顧問税理士の変更を検討すべきポイント

短期間で複数回税務調査を受けている

税務調査を何度も受けている場合、税務署に狙われている可能性があります。
適切に申告していても、申告内容の確認のために税務署が税務調査を実施するケースはありますが、短期間に何度も税務調査が行われるのは、申告内容に誤りが散見されるからです。
そのため税理士を起因としたミスにより、何度も税務調査を受けている場合は、顧問税理士を変えることも検討してください。

今よりも効果的な税金対策を実施したい

節税制度を利用や特例適用の有無の判断は、会社ごとに行います。
計算誤りのない申告書でも、税金対策をしていなければ余計に税金を支払っているのと同じです。
また税理士は正しく申告書を作成するのも仕事ですが、会社の事業内容や業績に合った節税方法をアドバイスするのも仕事の一つです。
そのため今よりも節税を求める場合は、顧問税理士以外の税理士からアドバイスを受けることも選択肢になります。

申告誤りにより無駄な税金の支払いを抑えたい

税務調査は誤った申告内容を指摘するために行うため、税務調査を受けても適切に申告していれば、余計な税金を支払うこともありません。
また税務調査を受けて、申告内容に誤りがなければ、税務署から『是認通知書』が交付されます。
是認通知書は、税務署が適切な申告書を提出したと認めた書類であり、原則調査対象となった税目・課税期間の税務調査が再び行われることはありません。

同じ顧問税理士に依頼することが最良な判断とは限らない

税理士によって報酬金額も違いますし、節税方法も異なります。
そのため現在の顧問税理士に不満な点がある場合には、一度顧問税理士の変更も検討してください。
病気の治療も主治医だけでなく、セカンドオピニオン(第2の意見)を求める時代です。
税金の申告も顧問税理士だけでなく、他の税理士の意見(セカンドオピニオン)を聞くことで、さらに節税ができる可能性もあります。

この記事の監修

植村悦也
植村悦也
税務調査専門の税理士

元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。

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