脱税していない会社であっても税務調査の対象となるケースもあり、税務調査の連絡は突然かかってきます。

本記事では税務調査が実施される時期と、調査が行われる際の流れについて解説しますので、事前に調査を受ける際の流れをご確認ください。

不正をしていないのに税務調査が実施される理由とは?

脱税をしていなくても税務調査を受けるケースとしては、計算誤りおよび申告漏れを指摘する場合と、申告内容を確認する場合の2種類あります。

申告書の計算・申告内容の誤りを指摘するための調査

税務署が税務調査を行う最大の理由は、脱税や申告漏れを指摘するためです。

しかし税金をごまかす意図はなくても、税額計算が間違っている場合や売上の計上漏れ、経費算入できない支出を経費として計上しているケースもあります。

そのため税務署は、申告誤りを指摘するために実地調査を行います。

経費算入や特例適用の判定を確認するための調査

税務署は、経費算入の判定や特例の適用要件の適否を判断するための確認調査も実施します。

たとえば法律の解釈で見解が食い違うことはよくあり、税務署は納税者の解釈を確認するために調査することもあります。

また特例を適用する際は要件をすべて満たす必要があり、一つでも要件に該当しないと特例は適用できません。

特例要件を満たしていると偽って申告する人もいるため、税務署は申告書だけで確認できない場合は税務調査で聴き取りを行い、経費参入や特例の適否を判断することもあります。

税務調査のタイミングと実施される周期

税務署には税目ごとに部署が分かれており、担当部署(個人課税部門や法人課税部門)ごとに、税務調査を実施するタイミングや周期は異なります。

法人の調査は1年中実施している

法人の調査は、年間通じて行われます。

個人が関係する所得税や贈与税の実地調査は、7月から12月に行うことが多く、1月から3月は確定申告期間になるので、その期間に実地調査が実施されることはほとんどありません。

一方で、法人税の申告時期は会社の決算月によって変わるため、1月から3月であっても実地調査は行われます。

ただ法人調査は決算書を提出して数ヶ月後に調査をするケースが多いため、3月決算の法人であれば7月から12月の時期に税務調査を受けることが多いです。

法人税の調査を毎年受けるケースはほとんどない

過去に脱税をした法人や、売上が大きい法人は定期的に調査を受けるケースもある一方で、税務調査をまったく受けない会社も存在します。

実地調査は法人件数に対して年間3%程度の割合しか受けませんので、平等に調査をすると30年に1度のペースです。

そのため税務署は脱税の疑いのある法人や、特例適用誤り・計算誤りのある法人を優先的に調査しています。

また税務署が法人税の調査を行う場合、数年分の申告書を一度に調べますので、毎年税務調査を受けることはほとんどありません。

(他の税目で調査を受ける可能性はあります。)

税務調査の連絡が来てから実施されるまでの流れ

税務調査を受けるとなった場合、税務署からどのように連絡が来るのか、また税務調査が始まって終了するまでの流れを解説します。

税務調査をする際は調査宣言をする

税務署が税務調査を実施する際は、調査対象者に対して原則調査を行う旨を事前に伝えなければなりません。

事前連絡の際は、次の事項について説明があります。

<事前通知する内容>
● 実地調査を開始する日時
● 調査を行う場所
● 調査の目的
● 調査の対象となる税目
● 調査の対象となる期間
● 調査の対象となる帳簿書類など

税務調査=マルサのイメージがありますが、マルサのように調査担当者が突然自宅や会社に訪れて調査することはほとんどありません。

事前通知を行わずに実地調査できるケースは、事前に調査があることを伝えることで隠蔽や逃亡など、調査の遂行に支障があると判断された場合に限られます。

そのため無申告の納税者や、税務調査を拒否するなどしない限り、実地調査の連絡があってから実施されます。

実地調査日の日程調整

実地調査を行う日は、税務署の一方的な都合ではなく、納税者および関与税理士の予定も確認して調整します。

調査日は、事前連絡の日から2週間後~1週間後に実施されるケースが多いです。

先に税務署が実地調査の希望日時を提示してきますので、提示された日時に対応できない場合、こちらの都合を伝えて日程調整をします。

当日に行われる調査内容

実地調査日当日は、最初に調査担当者が身分証明書を提示しますのでご確認ください。

調査担当者は会社を訪問してすぐに書類を確認することはなく、午前中は社長に売上や従業員の人数など、会社に関する情報を質問してきます。

世間話のような内容が多いですが、不用意な発言をすると調査担当者が発言元について調べる可能性もあるため、質問された内容にのみ回答してください。

会社の状況についての聴き取りが終わると、次に申告書の関連資料を調べます。

調査の途中で調査担当者から決算書の内容について質問されたり、追加の資料の提示を求められることもあります。

調査担当者の確認事項が調べ終われば1日で実地調査は終了しますが、当日に調査資料を用意できなかったり、調査担当者が1日で確認しきれなかった場合は、実地調査2日目に突入することもあるためケースバイケースです。

実地調査が終わると、税務署は調べた内容や質問に対する回答が適正であったかを確認するために、金融機関や取引先へ反面調査を行います。

もし虚偽の回答や不正をしていた場合、後日調査担当者が訪れて「質問応答記録書」を作成し、重加算税が賦課される可能性もあります。

調査内容の結果説明

実地調査が終わってから1か月後を目安に、調査結果の説明が行われます。

調査結果の説明では、調査担当者から実地調査により判明した事実を提示され、申告内容に誤りがあった場合、誤りの箇所や申告漏れの財産・売上について具体的に指摘されます。

調査結果の説明で指摘を受けた内容に応じる場合は、修正申告書を提出して追加で本税および附帯税(加算税・延滞税)を納めなければなりません。

一方、調査により不正が無かった場合には、申告内容が正しかったとして是認通知が送付されます。

是認通知は適正に申告していたことを証明する書類であり、調査対象期間の申告書が再び調査されることはありません。

調査連絡を受けた後に税理士へ依頼することも可能

確定申告書は、納税者自身が作成し提出しても問題ありません。

しかし申告内容に誤りがあれば余分に税金を納めることになりますし、実地調査の対応はすべて納税者自身で行うことになります。

それに対し関与税理士がいる法人は、税務署は実地調査の連絡を税理士経由で行うため、直接調査の連絡を受けることはありません。

また日程調整などもこちらの都合を伝えてくれるため、初めて税務調査を受ける際も安心です。

なお実地調査を受けることが決まった後でも、税理士に依頼して調査対応をしてもらうことも可能です。

ただ申告書作成から携わっている税理士の方が税務署の質問に対して意見を述べやすいため、当初から顧問税理士をつけることをオススメします。

この記事の監修

植村悦也
植村悦也
税務調査専門の税理士

元税務署長・元マルサ担当官などをパートナーに、税務調査専門の税理士として年間100件以上の相談を受ける税務調査対策のプロ。
追徴税額を0円にした実績も数多く、Googleクチコミ4.9という人気を得ている。

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